第 3 回 ババラ

第1回ウェブゲームクリエイターインタビュー 石井克雄

4. 死ぬこと自体、意味がない - 「太くて長いオレの○○○」シリーズ

星野

太くて長いオレの○○○」はどんなきっかけでつくり始めたんですか?

ババラ

去年の夏、暑かったんで、仕事したくないなーと思って(笑)
最初フィールドマップの絵をFLASHの描画ツールで
適当に描いたのが始まりです。
パソコンの「King's Quest」っていうゲームがあるんですけど
一枚絵の中をキャラが動いて王様の依頼を受けて
冒険をするアドベンチャーゲームだと思われるゲームなんです。 スクリーンショット太くて長いオレの○○○

星野

思われる?

ババラ

やったことなくて雑誌の記事とスクリーンショットの
印象だけで想像しているので(笑)
そんな感じのゲームをつくろうと思って絵を描いて
つくり始めたんですけど、剣がパワーアップしたときに
剣のサイズを変えたらおもしろいかなと思って。
で、それを試したときにサイズ指定を間違って、
画面に収まりきらないような剣がでちゃって(笑)
でも、その絵があまりにもおもしろかったんで
これワンポイント押しのゲームにしようと。
そのときにタイトルも決めました。

星野

タイトル含め全てが一点集中ですね。 スクリーンショット白い部分が剣です

ババラ

でもこのゲームはそんなに受けるとは思ってなかった。
会社の同僚でやけに熱心にハマってる人がいて、
その人が「ついに魔王を倒した」っていうから
対抗して魔王を増やしたり(笑)
だんだん彼に対抗するために
バージョンアップしていくようになって。
犬小屋おいてみたりとか。

星野

意地悪で(笑)

ババラ

そうしたら、彼以外にも「ハマった」とか
「おもしろい」とか海外では「best game ever」とか
書いてあったりして。
予想外におもしろがってもらえてたみたいで驚いた。
ゲームとしては、地名の自動生成だけおもしろがって入れました。

星野

自動生成はどうやってるんですか?

ババラ

50音からランダムに選んでるだけですね。

星野

本当にただのランダム?

ババラ

ただのランダムですね。
里見の謎」みたいなおもしろさが出せたらいいかなと思って。 スクリーンショット意外と説得力のあるランダム固有名詞

星野

予想外に受けたということだったんですけど
なんで受けたんだと思います?

ババラ

なんででしょうね。
太くて長いオレの○○2」は楽しんでもらえるだろうと
思って創ったんですけど、
1はなんで受けたのかいまだに理解できない(笑)
敵も7種類くらいしかいないし。

攻撃したときにゲージが減っていく気持ちよさとかは
考えて創ったかもしれないですね。

星野

なるほど。
外野が勝手に分析するのはやっていいことだと思っているんですけど
ゲージが減る気持ちよさとか
丁度ころあいで成長していくところとか。
まさに「易しげ」なやめられない恐怖(笑)

ババラ

そうですね、このゲームも
死んでも所持金が半分になることもないし。

星野

所持金が減っても意味がない。

ババラ

死ぬこと自体がほとんど意味がない。
ペナルティがなさ過ぎてかえって恐ろしいかもしれない(笑)

星野

僕はずっとババラさんのゲームを既存のゲームの枠内で見ていて
遊ぶんだけど新しいかっていうと
新しさっていうのはないと思ってたんです。
でも実際はこの麻薬的な簡単さがすごく新鮮で
自分がなぜかプレイしてしまっていた理由は
まさにこの簡単さだった。

ババラ

つくっている過程では
ゼルダっぽいハート表示がめんどくさいから
死なないようにしてみました、とか。
死ぬとゲームオーバー処理をつくらなきゃいけなくて
結構手間かかるんで(笑)

星野

面倒だから死なないみたいな表現になってますけど(笑)

ババラ

ゼノレダ」とかはライフ表示のやり方がわからないから
ライフがなかっただけなんですけど
そうしたら脱出アドベンチャーみたいになっちゃったりして。
よくあるゲームにアイデアを加えて新しくするんじゃなくて
今あるゲームから何かを取っちゃったら
新しく見えるみたいな感じかもしれないですね。 スクリーンショットゼノレダ

星野

自分でテストプレイはどのくらいするんですか?

ババラ

テストプレイが一番時間かかります。
開発期間の大半はテストプレイです。
「太長2」とかはパラメータの限界チェックとか
敵の出現パターンのテストでだけでも大変で
ゲームバランスまではテストしてないですけど。

星野

やめられないバランスが取られていると思うんですけど。

ババラ

取られてないんですね。

星野

取られてないんですか(笑)

ババラ

死なないんで死んで学習してもらうみたいな感じでつくってない。
レベルさえ上げればクリアできるんで、クリア後の処理だけ問題なければ
いつかは進めるだろうっていうのもあります。

星野

「太長2」はブログでの難易度調整はどんな方針でやってたんですか?

ババラ

「太長2」はプレイヤーを殺す方向で調整してました。
調整中どんなに難しくしても即効で倒したっていうコメントがあったんで
どんどん難しくしていって。
水属性しか効かないとか、攻撃するとテレポートしたりとか
画面外に押し出されたりとかあらゆる手を講じて対抗しました。
最後はもう硬くしておけばいいんじゃない
みたいになってるんですけど(笑) スクリーンショットバラエティーあふれる2のボス戦

星野

確かに、クリアするたびに次のボスがありえない強さっていう
印象を毎回感じてましたね。
最後とかはもうテクニックでクリアするのは諦めて
自分のHPより敵のHPの方が速く減るようになるまで
育ててからアタックするしかないと思って
淡々と育ててましたね。
最初から宇宙までつくる予定だったんですか?

ババラ

最初に友だちに「こんなゲームつくるよ」って説明したときに
「太長」のフィールドを出るともっと広い世界があって、
この世界を出ると宇宙に飛び出すんだって冗談で言ってたんです。
で、つくってるときにそれを思い出して
宇宙まで行くとおもしろいんじゃね?と思って最後につけた。

星野

最初に冗談で言ってたことを最後に思い出してつけた(笑)

コメントとかで、敵をやっつけた時の報告が
何時間とか何分とか時間で書かれているんですよね。
どれだけ時間がかかっているかが重要なファクターになっているのが
おもしろいと思いながらみてましたね。

あと海外のリアクションとか、この記事も含めてブログにも
書いてあるんですけど、どんな感じですか? スクリーンショットワールドマップも16倍

ババラ

海外すごいですよ。
ガンガンメールが来るんですけど、
純粋な賞賛もあれば、うちのサイトで公開させろみたいのもある。

星野

それは商売系ですか?

ババラ

商売系です。

星野

雑誌掲載許可の話しもありましたよね。

ババラ

フランスのゲーム雑誌だったんですけど
その雑誌社のページをみてもどの雑誌に載るのかも解らないし
いつ掲載されるのかもわからないんで、
そういうこと教えてってメールしたらそれっきりリアクションがない。

星野

怪しいですね(笑)
「太長」が持っている、プレイをやめられない麻薬性は
世界共通の麻薬性だったんですね。

ババラ

2をつくり始めたときはちょうどサイト全体の
アクセス数が減ってた時だったんで
簡単につくれてアクセス数稼げるっていう
マーケティング的な理由もありました(笑)

星野

そしてちゃんとウケた。

ババラ

とはいえこんなにウケるとは思いませんでしたけど。
あ、なんで1がウケたのか思い出しました。
ニコニコ動画のメンテのときに
ユーザ同士の交流掲示板でゲームやろうぜっていって
リンク張られていて、そこからの流入が多かった。
ニコ動がメンテになるとドーっと人が来てたんでした。
だから一時期はニコ動がいつもメンテしてればいいのにって
思ってたこともあったような(笑)

(聞き手:0stage 星野健一

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・LUCASARTS ADVENTURE ISLAND : King's Quest Series
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