第 2 回 宮澤卓宏

第1回ウェブゲームクリエイターインタビュー 石井克雄

2. お年寄りが大好きで - 「引越し奉行」制作秘話

星野

それでは「引越し奉行」から。
「引越し奉行」はかなりウケてる印象があるんですけど
実際は、どうですか。

宮澤

そうですね、予想以上に。 スクリーンショット

星野

リリースしたタイトルがどのくらい話題になっているか
っていうのは、どういうところで認識していますか?

宮澤

検索でのヒット数ですね。
ブログがどれぐらい引っかかるか。
ブログだとひとつの記事テーマとして
扱ってもらえるので重みがありますね。

星野

「引越し奉行」を創るきっかけってなんだったんですか?

宮澤

Box2DFlashAS3」っていうエンジンを
使っているんですけど…

うわ、新しくなってる!

(Box2DFlashAS3のサイトを開くとトップページデモが新しくなっていた)

星野

新しくなってますね(笑)
これ、バージョンは…2.0。

宮澤

バージョンあがってますね。
あらー、またか(笑)

星野

メジャーバージョンあがっちゃってますね(笑)

(しばらく、変更点などあれこれチェック)

宮澤

これがリリースされてから半年くらいは
ほったらかしてたんですよ。
いろんな人が日本語で情報をまとめてくれてからの方が、
圧倒的に楽なんで待ってたんです(笑)

待ってたんですけどいつまでたっても
情報が出てこないで、おかしいなと思って。
それで、自分で見てみたら、
なるほど、癖があるって感じで。
でも、逆に癖があってやる人が少ないんだったら
自分で使えるようにしておけば
これ系の仕事がくるんじゃないか、と
いやらしい商売心もちょっと働いて(笑)

それで、とりあえず自分が使いやすいように
全部カスタマイズしたんで、
なんかカタチにしないとってことで創ったのが
「引越し奉行」とうわけです。

だから、うちの作品にしてはかなり
開発期間が短いんですよ。 写真

星野

ちなみに、実際にどのくらいの期間で創ったんですか?

宮澤

Box2Dの調査とかカスタマイズ期間をはずすと、
「引越し奉行」自体は4日とかですね。
その内、半分くらいで絵を描いて。

星野

やっぱり絵の時間が結構な割合を占めるんですね。
石井さんのインタビューのときも、
絵に時間が掛かる話しがありました。

宮澤

絵が一番時間が掛かりますね、本当に。

星野

Box2Dの習作という側面がある「引越し奉行」と
いうことなんですが、結構はちゃめちゃ設定ですよね(笑)
なんでまた、こういう設定になったんですか?

宮澤

Box2Dを使ってゲームを創ろうとしたときに、
いざ使おうとすると、有効活用できるゲームが
なかなか出てこなくて。
結構クセがあるので、そのままゲームに使うのは
難しいな、と。

星野

クセっていうのは、どういうところなんですか?

宮澤

例えば「引越し奉行」で家が組んであるじゃないですか、
あれは物理演算をしない状態で組んであるんです。
重力とかもまったく働いていない。
それで物理演算を働かせると、途端に崩れる。

この家を構成している柱とかだと、
どうやってきれいにつんでやっても、
物理演算を働かせた状態で
安定させるのが凄く難しいんですよ。

星野

そうか、正確過ぎる
っていう言い方が正しいかどうかわからないですけど、
もう、オブジェクトを立たせることすら難しいんですね。

宮澤

そうなんですよ。

それで、ちゃんと立たせるのは難しいけれども
物理演算を適用して崩すのは簡単なんですよ。
「え!こんなに壊れるの!」くらいに
きれいに壊れるから、それじゃあ壊してやれ、と(笑)

ただ、今度は壊すだけだと、やっぱり、
お子さまの教育上もよくないので。
なので、引越しという無理やりな理由をつけて、
引越した結果、壊れてしまったという設定にしよう、と。 スクリーンショット

星野

おお!そういうところで配慮が(笑)

宮澤

創るまでで、一番時間が掛かったところですね。
この設定にいたるまでが。

星野

配慮もしつつ
アイデアをまとめるまでが一番大変(笑)

実際にBox2Dを使って創るっていうところでは
他にどんなところがポイントでした?

宮澤

荷物を投げるカタパルトを
きちんと物理演算で動かしているところですね。
カタパルトの腕とロープと重りは物理演算で
実際に重りの重さで荷物を投げてます。

せっかくこういうシステムがあるんで、
投げるのも物理演算でやりたい。 スクリーンショット

星野

この、引越し屋さんもオブジェクトでしたよね。
荷物が当たるとこけたりして。
キャラ設定はどんないきさつがあったんですか?

宮澤

おばあちゃんは置きたかったんですよ。
無人の家にはしたくなかったし、
生活感があるのが好きなんで、
そうなるようにおばあちゃんを置いたんです。

でもそうすると、
おばあちゃんに荷物が直撃することは
十分にありえる。

星野

(笑)
そうですね。
むしろ狙いますよね。

宮澤

荷物は当たるし屋根は落ちるんで、
理由がないと、虐待ゲームになってしまう。
それもあって、引越しっていう
理由をつけて「引越し奉行」。

星野

家を崩すだけならそんなに困らないけど、
どうしてもおばあちゃんを置きたくて
それをどうクリアしようかっていうのが
大問題だった(笑)

宮澤

そうなんですよ。
おばあちゃんを置きたいんですよ(笑)

それで、引越しっていう理由を付けたけれども
それでもまだちょっと虐待感がある。
なので、おばあちゃんをすごい強気にして、
強気な台詞をしゃべらせることにしたんです。

「ひぃ~」とか「痛いぃ」とかじゃなくて
「なにしとんねん」とか「やる気あるんか」とか。
思いっきり荷物が当たっているにもかかわらず
強気の台詞を言わせることで
おばあちゃんをいじめてるのではありませんよ
っていうところをアピールしているわけです。 スクリーンショットおばあちゃん強し

星野

プレイヤーが「仕事が下手ですみません」っていう
気持ちになれるように。なるほど。
おばあちゃんをなんとしても置くために
試行錯誤しているのが面白いですね。
おばあちゃんに対するこだわり(笑)

宮澤

なんか、年寄りが好きなんですよ(笑)
昔創ったゲームでも、おじいちゃんが
主役とかあったりして。

星野

それって、どのタイトルですか?

宮澤

うねりの塔」ってやつです。 スクリーンショットうねりの塔 - おじいちゃんが主役

星野

ああ、なるほど。プレイしたんですが、
確かにおじいちゃんが主人公ですね。
なかなかシリアスな物語があって。

宮澤

シビアなゲームなのに
主人公がおじいちゃんっていう。

星野

おじいちゃんが危険を冒してまで実験をして、
それが助成金のためだったりして。

宮澤

なかなか生々しいはなしで(笑)

星野

そんな大好きなお年寄りに
荷物を投げつけるっていうのは
確かになかなか悩むところですね(笑)

ドリフ感なのかも知れないですけど、
志村けんの強いおばあちゃんみたいな感じで
確かに虐待感はないでよすね。
こっちが狙ってても全然強いですから。
おばあちゃんがラグドールとかじゃなくて
座ったまま転がるだけなのも
強さに繋がってるかもしれないですね。

ちなみに、「引越し奉行」は、
おばあちゃんの引越しに至るストーリーはありますか?

宮澤

いや、それは特にないですね。

星野

やっぱり、ないんですよね。

なんでそんなことを聞いたかというと、
どこかのサイトで「引越し奉行」のストーリーを
読んだ記憶があったんですよ。
でも、SKTのサイトにはそれが無かったんです。
それで記憶違いだったのかとか思いながら探したら、
やっぱりあったんですね。

宮澤

えー、どんなストーリーなんだろう。
気になる。

星野

結構切ないストーリーなんですよ。
TECHSIDE.blog の「引越し奉行」エントリなんですけど。

(サイトを開く)

宮澤

「意見の不一致により子供の嫁に追い出されてしまったおばあちゃん」
ええー!
「とうとう引越しの日がやってきました」
はー、そうなんや!
こういう話だったんですね(笑)

星野

みたいですね(笑)
オフィシャルじゃなかったんですね、やっぱり。

宮澤

僕、ストーリーはあんまりつけないんですよ。
あと、キャラに名前もつけない。

そういうところはユーザーに
自由に創ってもらった方がいいかな、と思ってて。

星野

じゃあ、このストーリーはまさに狙い通りなんですね(笑)

言われてみると確かに、
例えば「雑念打」もストーリーを感じるんだけど
実際には深いストーリーがあるわけじゃないし設定もほとんど無い。
細かい設定を抜くことで物語り感が強くなってるんですね。

宮澤

そうかもしれないですね。

星野

という流れになったので
次は「雑念打」について聞かせてください。

(聞き手:0stage 星野健一

本文中のリンク
SKT-products
・SKT : 引越し奉行
・SKT : うねりの塔
・SKT : 雑念打
Box2DFlashAS3
・TECHSIDE.blog : 「投擲系Flashゲーム「引越し奉行」で全壊してみる」
・0stage : ウェブゲームクリエイターインタビュー 石井克雄 vol.5
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